”My name is Ikuzo from Japan”

- それ以外の英語は話せません -

塞がった出口

宿のオーナーが言っていた通り、街のどこで歌っても必ず警察や警備員に止められた。

「今バンコクは街を綺麗にしてるんだよね。ほら、あそこにあった屋台街も全部潰されたんだよ。だからもし歌うならカオサンしかないと思うよ。だってライセンス取るお金もないんでしょ?」


日本語が上手な宿のオーナーに「いや俺日本人だよ」と言われたことよりも「カオサンしかない」という言葉が効いた。

実際、バンコクの街中で一応歌うことはできるが、いい場所では止められ、あそこならいいと指差す方に人はいない。

他のバスカー達も、渋滞のつづく車道に面したありえない場所でパフォーマンスをしていた。

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見た目のいい場所はたくさんあるけれど、バンコクの交通量とその騒音の前では何もできやしない。

しかし、それはカオサンでも同じことであり、悔しくも他の路上場所を探しに行くバス代さえ稼げずにいた。

もう、カオサンでやる以外にバンコクを出る方法はないだろう。


しかし、その先にも大きな問題がある。


つい最近オーバーステイしてしまったベトナムには数年間入れないと言われた。

そして度重なるビザランによって、シンガポールからも入国拒否を受けている。


つまり北も南も陸路が塞がってしまった。

飛行機を使おうにも、前回搭乗拒否をくらった以上、アウトチケットを持たずに片道入国はもう不可能だろう。

そもそもそんなお金ここでは作れない。


今更だけれど、俺はもっと早くアジアを出るべきだった。
そのタイミングは何度かあったはずだ。

なにしてんだ俺は、ほんとに終わっちまうぞ。

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