祭りのあと
ラオニューイヤー恒例のイベントが無事終了した。
歩道に飛び出たホースはたたまれ、大きなスピーカーも全て消えていた。
おかげで久しぶりに静かな路上で歌えたけれど、道行く人もどこかおさえたような足音で通り過ぎていった。
それでもたくさんの人が栄養を分けてくれたので、俺はビザが切れる明日中に列車に乗ってバンコクへと行ける。
そしたらもうカオサンで電柱にちんちん擦り付けながらみゆきを歌わないと。
固形石鹸もあと親指の爪くらいしかないし、とりあえず生活用品をまた一通り揃えたいな。
ビエンチャン最後の路上を終え、近くのコンビニで一番いい固形石鹸とパイナップルの輪切りを買って帰る途中、ミラというお姉さんに声をかけられた。
はじめまして、と言ったら「アタシこの前お金入れたけど」と言われ白目むいてパイナップルを差し出したら笑ってくれたので一緒に食べながら歩いた。
ずっとついてくる猫をからかいながらメコン川沿いをのんびりと歩いた。
ビエンチャンは夜12時を過ぎるとほぼ全てのお店が閉まってジュースさえも買えないので、行き過ぎては引き返し、なにも決まらないまま3時間もただ話していた。
解読不能な俺の言葉をずっと笑ってくれたミラはウクライナ出身の写真家で、それに加えて路上でファイアーダンスをして稼ぎながらまわっている。
こんな超絶理解のあるミラとなら100人産んでも大丈夫と言える男になれそうな気がするけれど、どうやら明日からパンガン島というタイのとある島に行ってしまうそうだ。
そこで行われる「フルムーンパーティー」というかなりイカレタお祭りにカメラを向けるのが仕事なんだと。
フルムーンというからには満月の日にやるんだろう。
どうやら多いい時には10万人近くものイカレタ野郎達がパンガン島へと押し寄せるんだそう。
そこでバケツに入った混ぜこぜの酒を死ぬまで飲んで服も脱ぎ捨てて波打ち際で世界中の男女が音に打たれてワッツアップな一晩を繰り広げる、それがパンガンのフルムーンだよと人差し指で猫の首筋をなぞりながら炎の妖精ミラが言った。
次の満月は5月2日、そして俺は行く。
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